那須「ムクナ豆」ファームの栽培について

耕作地と栽培環境について

2015年に5年以上放置されていた元水田2反(600坪)を借り受け、一度全体の土起こし を行い、何度もトラクターで耕うんし圃場として整備しました。(第一圃場)

無限進育性の強勢ツル性植物のため、自由にツルが伸びるよう、また、花は房になるため、管理や収穫作業の効率化を考え、間口3m×高さ2m×奥行36mの棚を6列構成しています。

棚の左右には支柱を斜めに掛けたうえで、両サイドと上部に網目20Cm程度のネットを展張しています。
2017年に隣接耕作放棄地1反(300坪)を追加で借り受け、第一圃場と同様の整備を行い、4列の棚を作りました。

更に2019年には、整備した圃場の北側100m程の自宅前の荒れ地2反(600坪)を借り、2023年中の完成を目指して整備を進めています。

各圃場内には、それぞれ、農業用のビニールハウスを設置し、育苗や収穫した豆の追熟・乾燥を行っています。

第1、第2圃場を上空からドローン撮影(2022年9月撮影)

農薬について

「ムクナ豆」は虫が付きにくい豆と言われていますが、「メイガの幼虫」「根きり虫」「カメムシ」「アブラムシ」の発生を経験しています。

寒い時期に耕うんして幼虫を駆除したり、重曹や酢などで大発生を防いだり、栽培管理で防止したりと毎年、工夫しながら被害を防いでおり、農薬は一切使っていません。          

肥料について

「ムクナ豆」は名前のとおり「マメ科」の植物ですので、空気中の窒素を根に根粒菌として蓄えます。
このため、窒素肥料はほとんど使いませんが、成分バランスが良い「鶏糞」とミネラルの「カキガラ石灰」を少し使っています。

また、土壌改良に馬糞やムクナ豆の莢と落ち葉に糠を加えた堆肥を作り、毎年圃場に漉き込んでいます。

化学肥料は使いません。

栽培期間について

「ムクナ豆」は、亜熱帯~熱帯地域が栽培適地です。沖縄では年2回の栽培が可能と言われていますが、那須地方では遅霜が終わる5月になるまで定植は出来ません。

これまで、試行錯誤を繰り返した結果、4月中旬にポットに1粒ずつ種を播き、5月中旬に定植するのが、最も効率的と考えています。他の豆類と違い、定植後の降水量が少なければ、水やりが必要です。

気温が上がる6月中旬になると急に蔓が延びはじめ、7月中旬には蔓の剪定が必要なほどになります。

7月下旬には、花が咲き始め、8月には余分な蔓の剪定と、花が終わった後の「カス」を落とす作業が始まります。私はこの「花カス落とし作業」が虫の発生を抑制すると考えています。

那須ムクナ豆ファーム
那須ムクナ豆ファーム

9月以降も旺盛な生育が続きますが、那須地域では11月中旬の「収穫」(霜などの低温)を見据え、9月15日以降咲いた花は「未熟豆」とみなし、「種」としての収穫対象にはしません。

この「未熟豆」は、ある程度大きくなった時点で収穫し「枝豆」と同様、塩茹でにしていただきます。(一度に多く食べられないので、ゆで豆は小分けして冷凍保存します)
         

収穫と追熟・乾燥について

9月下旬には、莢の色が灰色に変化した「熟成豆」が出始めますが、本格的な収穫は霜が降り始める10月下旬から11月下旬になります。

涼冷地の那須では、圃場で完熟する豆は収穫種(加工・販売できる豆)の三分の一ほどで、残りは収穫後の追熟が必要になります。

収穫対象を見極めるのは、経験が必要です。同じ大きさで色も同じ「緑色の莢」でも、乾燥・追熟した結果、「種」と「真っ黒な未熟豆」の2種類になります。

この見極めをしないと、その後の収穫・追熟・乾燥作業が無駄になる事があります。
収穫作業は低温との勝負で、1日~2日と短期間で行うため、作業を始める前に、非収穫対象豆(未熟豆)の収穫を終わらせておくことが効率的です。

収穫対象の「緑色」の莢は、追熟により、「黄色」「薄灰色」「灰色」(完熟)と変化し、取り出した種(豆)は、味も含まれる成分も完熟豆と違いがありません。この追熟に関しては、ムクナ会会長の藤井先生も、収穫後の緑色の莢が、光合成をしていることを確認されていると伺いました。

L-ドーパの含有量に違いが無い事は、この豆から作る焙煎きな粉やミクロパウダーの含有量が3.4%・4.4%と、とても高い数値であることからも証明されています。

追熟・乾燥は、ハウスの中にφ19㎜か22㎜のパイプを使ってアングルを組み、その上部に麻ひもを掛けて1.5m程度の長さに垂らしておき、収穫した房の状態で紐に引っ掛けます。(写真①)

1本で10房程度干せるので、20m程度のハウスで約3t(乾燥豆で約400kg)が干せます。

1月半ほどで乾燥しますので、大きなネットに入れてさらに干しておきます。(写真②)

ネット内で、莢が爆ぜて種が飛び出すようになれば、種の取り出し作業開始のサインです。

種の取り出しは、1莢ごとに選別しながら行う事が、豆を傷つけず、効率的で、埃がたたない方法です。